小・中学生が学校の身体測定だけで充分なのか?

スポーツ栄養

公認スポーツ栄養士の柴田至且です。

前回は体重を計ることで、健康維持やアスリートのパフォーマンス向上についてお話しました。

今回は「なぜ?小・中学生が身長・体重を定期的に測定する必要があるのか?学校の身体測定だけで充分なのか?」について、お話ししていこうと思います。

学校の身体測定だけでは不十分

小学生や中学生は、学期ごとに身体測定と称して、身長や体重を定期的に測定していると思います。しかし、5月、9月、1月というタイミングでの測定になり、その間に身長や体重が意外と増えていることもあります。本当に伸びている時期には、1ヵ月に1㎝以上伸びていることもあります。また、その期間に様々な要因で成長が止まる場合(例えば夏休みに部活やスポ少、クラブチームの練習が多くて、夏バテになって食事量が減少しているなど)が、実際に選手のサポートをしていると、発生することがあります。また、精神的に悩みが多い時期でもあり、それがきっかけで食事量が減少して、身長が伸びない、体重が増えないということも起こります。

これらをいち早く発見するためには、学期ごとのタイミングでの測定では、手遅れになってしまう場合もあります。幼少の頃から、その才能を見出されたトップアスリートたちは、もっと細かい間隔で身体測定をしていたり、自分で体重や身長の記録をつけていたりすることから、細かいデータが残っていることが多く、それらを活用して現在では身長の予測や伸びる時期だと思われるタイミングを知らせてくれるアプリがあります。

男子用(西別府病院のヘルスメイト)

女子用(順天堂大学のスラリちゃんシリーズ)

ただし、これらを導入・運用する場合、素人判断で行うのは危険な場合もあります。あくまでも参考にしつつ、食事や運動(練習)、生活習慣、生活環境など様々な要因を総合的に判断しなければなりません。実際に、予測よりも身長が伸びる場合もあれば、それよりも低くなる場合もあります。保護者の方がデータを管理して、本人には最終の予測身長を伝えないなど、ヤル気をなくなさいような運用も必要でしょう。予測よりも大きくなる可能性があるのに、知ってしまうことで、諦めてしまう場合もあるでしょう。あくまでも統計に基づいて算出された値であり、個人に適用した場合には、様々な要素が関わっているので、一概に予想通りになるとは限らないからです。実際にそのような例をたくさん見ました。少なくとも平均や標準偏差の事を理解しておく必要があるでしょう。

たくさん食べたら解決するのか?

また、成長曲線や身長の予測などを活用しながら、実際にどうすれば良いのか?という判断は、やみくもに食事をたくさん食べたとしても、改善されるのでしょうか?

例えば、一部の競技の中では、選手一律に「練習に来る時のお弁当は、米(ごはん)1㎏を持ってきて、それを完食できなければ午後からの練習に参加させない」などという、体格を無視した食事の指導をしている指導者もいることを聞きます。そのチームがもしそれで実績を上げているのだとしたら、「1㎏食べられる選手=体格に恵まれた選手」というセレクションをかけているのと同じで、体格が小さくても上手い選手やスピードや体のキレで勝負するスリムな選手には、活躍の場を与えてはもらえないでしょう。確かに、高校、大学、社会人、プロで活躍できる選手を多く輩出することができるかもしれない反面、否定された選手はその後競技を続けて行けるだろうか?劣等感を持ち続けるのでは?結局のところ競技を止めてしまうのでは?というモヤモヤとした気持ちが残ります。

成長に応じた食事量と練習量のコントロールが大切

話が脱線しましたが、食事、特にエネルギーやたんぱく質については、体格に応じて適量を食べる必要があります。1度の食事、補食を加えたとしても食べられる量には限りがあります。小・中学生の練習が非常に長時間におよぶ場合、食事で摂ったエネルギーの大部分を練習で使い果たしてしまうというようなことが起こりえます。土日の練習だけだと、平日の練習時間が短ければ回復する可能性がありますが、長期休暇の場合には、回復する余裕もなく、練習をこなすのに精一杯という状況になるかもしれません。すると、体が成長するエネルギーや適切に体重が増加するために必要なエネルギーが不足して、身長の伸びや体重の増加が停止してしまいます。

本来、成長期には成長を妨げるほどの練習量をこなすことはNGです。食事で摂ったエネルギーの中で成長も十分にできるようにしなければならず、成長が止まるようであれば、練習量や時間を減らす必要があります。しかし、指導者の中には、未だに成長が止まるほどの練習を強いる場合もあります。例えば、授業の前に朝練を実施している中学校の部活などは、朝練に間に合うために朝食を食べずに練習に参加している選手もいたり、練習が終わってから補食を食べる事も許されないので、朝一の授業で既にエネルギーを使い果たして、授業に集中できない(エネルギー切れで居眠りしてしまう)選手もいたりします。こんな部活だと、適切な成長が妨げられるばかりでなく、勉強に影響がでる場合や、女子選手の場合には女性の身体へと成長できずに、初経が来ないままということもあり、その後の人生にも大きな影響を与えかねません。

家庭での身体測定をおススメします

そういったことを、未然に防ぐために、家庭で体重を測定して欲しいのです。成長期のはずなのに、毎日測定しても2週間、1ヵ月と体重が増えない場合には、エネルギーが不足していることが考えられます。あるいは、身長は伸びているものの、体重はそのままで体脂肪だけが減っていくということもあります。そのため、体重と併せて、身長も2週間に1度ぐらいの間隔で測定してもらえると、体重の増加と身長の伸びがリンクして増えているかどうか、良く判ると思います。本来は、身長が伸びれば、その分筋肉と骨が大きく長くなるので、体重も増えるはずです。

身長を測定する時は、保健室の身長計のような正確なものでなくても、家の柱に1㎜方眼紙をメジャーで高さを計ってから貼り付け、そこに形状が安定している箱(木や金属、硬いプラスチックの箱など)で頭を押さえて測定し、印と日付を書いていけば、簡易的な身長計になります(箱が水平になっているか注意)。同時に体重も書き込んでおいても良いですし、体重の記録用紙に記録しても良いでしょう。

体重の記録用紙はこちらで紹介しています!

方眼紙は束で買わないといけないし、身長計を買うほどではないけど、という方にはA4用紙に印刷して、柱に貼って使える身長測定用紙を作りましたので、ご活用ください。柱の太さにフィットするように幅8㎝にしていますが、それより細い場合には白い部分をカットして使用してください。また、白い余白には日付と体重、あるいは兄弟が見分けられるように、メモとしてご利用ください。矢印の部分には5cm単位で必要な数値を記入すると便利です。

2週間ぐらいの間隔で身長の測定を

私のサポートしているチームでは、2週間おきぐらいの間隔で、部室に貼ってある方眼紙に記録してもらっています。選手も自分の身長を把握でき、伸びてきた履歴も確認できます。今、身長の伸びが著しいと考えられるときには、その材料となる栄養もしっかりと補給するようアドバイスをしています。

私がサポートしている競技のひとつであるラグビーは、様々な体格の選手が同じフィールドで戦います。遺伝的な要素で決まることが多い身長は、高校生になると、ほとんど伸びることは期待できなくなります。ですから、中学生の内に自分の持っている可能性を、最大限に引き出せるように食事のアドバイスを行っています。それでも、小学生の内からアドバイスできていたら、もっと大きくできたのでは?という思いがあります。遺伝ではなく、環境、特に栄養の力で持てる最大限の可能性を引き出せたかもしれないからです。

小・中学生の栄養のサポートは、ガチガチに食事を管理するのではなく、ちょっとした食習慣の改善や今の食事にプラスすることをアドバイスするだけでも、大きく体が変化します。意外と、自分や保護者では気が付かなかったり、選手が根拠のない迷信のようなことを信じていたり、様々なことで上手く栄養のバランスが整っていない場合があります。「うちの子、上手く成長しているのかしら?」と思った時には、公認スポーツ栄養士など、専門家のアドバイスを聞いてみると、最適な方法をアドバイスしてくれるはずです。

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