高川学園ラグビー部・花園初出場までの軌跡

スポーツ栄養

花園初出場を果たした、高川学園ラグビー部のチーム栄養サポートを7年間実施しましたが、ようやく実を結びました。

とはいえ、なかなかレポートができなかったのは、チームに帯同するために仕事を詰めてやりくりしたり、そのしわ寄せやなんやかやで、こんな時期まで放置していました。お陰で、新年のご挨拶や年賀もできずじまいに…。

これだけは、ちゃんとレポートしなければと、ようやく重い腰をあげ、PCに向かっています。

山口県予選

山口県ラグビー協会ウェブサイトより引用

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2023年の新チーム始動時から、県内では公式戦負けなしで迎えた花園予選ですが、選手達も気負うことなく臨めるのかな?と思っていたら、思いの外緊張している選手も。それもそのはず、中学から高川学園に入学し、休部していた中学部をリスタートさせた2期生(1期生は休部前のメンバーで、リスタート後が2期生)の面々は、これが最終学年の3年生で、ラストチャンスでもある訳ですから、緊張するのも無理はありません。

特にキャプテンとなった大嶋柚楽にとっては、相当な重圧がかかり、この予選にかける思いは並々ならぬものだったと思います。予選の初戦から緊張していたのが印象に残っています。

高川学園は春の中国大会予選でも優勝しており、この花園予選ではシード枠だったので、準決勝からの出場です。完封とノーペナルティーをゲームスローガンに試合に臨みました。ノーペナルティーは達成できなかったものの、合同チーム相手に大差をつけての完封勝利を収めました。ここまでは想定通り。ただ、一点だけ、この試合でフランカーのレギュラーが首と肩を痛めたことで、次戦の決勝戦は欠場する見通しとなりました。とはいえ、そこは以前と比べると層が若干厚く(といってもフランカーだからですが)なっているので、それほど心配は必要なく、代わりの選手がしっかりと穴を埋めてくれるでしょう。

迎えた決勝戦。相手は昨年の覇者でもある大津緑洋高校(旧大津高校)です。ここでも完封をゲームスローガンに掲げて、試合に臨みました。これで花園出場校が決まるとあって、流石にどの選手も緊張感が高まっています。特に3年生は緊張している様子で、逆に2年生の面々は、意外とリラックスしているように感じました。

キックオフからしばらくは一進一退の攻防で、ミスも散見されました。やはり緊張しているのが、見ていても伝わってきます。均衡が破れたのは、開始5分。ウイングの野村映登がボールを持ち出して、トライを決めました。ゴールも自ら決めて、まずは先制点をゲットしました。が、まだ緊張している様子。その後、20分までは攻防が続き、膠着状態でしたが、ようやく2本目のトライを決めて、緊張が解けた様子でした。25分にもトライを決めて、そのまま前半を折り返すかと思われたロスタイム。1トライを返されて、前半を折り返します。

後半は緊張が解けたことと、ハーフタイムに全員が役割を確認、前半を踏まえて何をするべきかを徹底することで、トライラッシュが生まれました。後半もロスタイムとなり、最後の攻撃、大津さんの必死の攻撃により1トライを失いましたが、57-12で初優勝を成し遂げました。

選手達と保護者・応援して下さった方々は歓喜に沸いていました。創部以来初の花園出場を、自分たちの代で成し遂げることができたから、尚更嬉しかったことでしょう。私はというと、意外にも喜びはあるものの、沸き立つような気持ちの高ぶりはなかったです。勝つべくして勝ったということもありますし、ここまでサポートしてきた選手たちの力を信じて、理解していたからこそ、なんだか当然の結果のようで、ある意味他人事のような心境でした。これがシーソーゲームで、どちらが勝つか判らないパワーバランスのチームだったら、もっと感動していたのかもしれません。

もしかしたら、この光景を見るタイミングが遅すぎたのかもしれません。タラレバを言えば、4年前、私がサポート開始して3年目、ちょうど高校1年生からサポートして、初めて全選手がサポート対象だった時に優勝していたら、もっと感情が爆発していたのかもしれません。

高川学園6年生、5年生が主体のチームで、もちろん全選手をチームとしてサポートしていますが、高校に入ってからは部員数も増え、それだけ一人当たりにかけられる時間も限られていたので、どうしても思い入れも少し違ったものになっていたのかもしれません。とはいえ、このレギュラーメンバーの内、中学からサポートしているメンバー12人については、中学校の間に高校生に交じって練習しても、成長を止めず、ケガをしないように、手厚くアドバイスしたことを思い出します。将来の主力、6年計画での花園出場を確実に成し遂げるための布石と思って、しっかりと育成できたと今でも思います。

花園出場にあたって

花園出場が決まると、チームにはテレビや新聞などの取材が殺到します。ましてや初出場ともなると、テレビが好きそうな話題を取り上げる訳ですが、今回の一番の話題は、野村監督の息子・野村映登との親子での花園出場。しかし、忘れてはいけないのが、実は野村映登の祖父は山口農業高校の監督をされていた時代に全国大会出場を果たしていますので、3代に渡る物語な訳です。ちなみに、このおじいちゃんは高校時代に山口県の1試合のトライ記録を持っているそうで、この記録は未だに破られておらず、おそらく余程のことがない限り記録が塗り替えられることはないでしょう。

さて、そんな取材の中、私のサポートについては、微塵も取り上げられることはなく…。まあ、想定内でしたが、テレビの絵作りとしてはウエイトトレーニングとプロテインで、身体作りは十分だったのでしょう。

これは世の中の認識を反映しているのかもしれませんね。プロテインはあくまで補助的に飲んでいるもので、高川学園でも私は推奨している訳ではありません。ただ、様々な家庭の事情があり、たんぱく質が十分ではない選手もいます。また、お世辞にも寮の食事は、ラグビー部の筋肉量に見合ったたんぱく質量を供給してくれるはずもなく、どうしてもプロテインで補う必要があります。そのため、仕方なく部で購入して飲んでいる訳です。各家庭で十分に食事から摂取できていれば、あるいは寮で十分なたんぱく源が供給されていれば、そもそも必要ないものです。

とまあ、栄養の話がでましたが、花園で何が困るのかというと、昼食の確保です。そして遠征に伴う宿泊による食事の調整です。

昼食については、いわゆる仕出し弁当のようなものもありますが、選手達が好むようなおかずではなく、食品ロスも避けたいので却下。また、揚物中心のガッツリ系のお弁当も、できるだけ避けたい。となると、中身をチェンジしてもらったり、イロイロ構成や調達先を検討します。ちなみに、今回はコンビニと大手お弁当屋さんをフル活用して、試合当日のお弁当などはカスタムで中身をチェンジしてもらうなど調整しました。普通は入っているちくわ天や白身魚フライなども、鮭や他のおかずにチェンジできるんです。交渉してみるもんですね。

それから練習場が宿舎と離れていたり、開会式に参加した後に練習場に行ったりと、昼食を受け取る場所が転々とします。山口県からの移動の際にも、昼食を受け取ったのは、高速のPAにあるコンビニ。意外とコンビニは、事前に予約注文すれば、大量のお弁当でも手配してくれるので、非常に助かります。ただ、最近はいわゆるお弁当が少なくなり、チルド弁当が増えたので、こういう時に選択肢が少なくなります。ましてや、揚物を避けようと思うと、なかなか選択肢が限られてしまうのがネックです。チルド弁当は温めるのを前提に作られているので、やはり冷めていると美味しさが半減するでしょうし、何より冷たい丼とか、やっぱり美味しくないですものね。

もう一つの課題が、ホテルの食事。ブッフェスタイルの食事だったのですが、1週間以上宿泊することになると、流石にそのぐらいの長期滞在は想定していないので、メニューが被ります。とはいえ、日頃の寮の食事などに比べると豪華な料理が並ぶので、みんな目移りするぐらい、あれこれお皿に盛ってくるわけです。

ここで大事なことを忘れている選手も多く、事前にチームの選手にはウェブサイト(チームのウェブサイトを開設して栄養情報をチームのみに公開しています)に注意点などを掲載していましたが、まあ守りませんよね。だって、初出場だから、みんな合宿みたいなノリですもんね。真面目な選手は、私に食べても大丈夫か聞きにきたり、内容を理解して上手くチョイスしていましたが、そうではない選手はイロイロやらかしていました。これは、私の周知不足で反省するべき点です。が、おそらく、周知していても守らない選手は守らないのかな?これも意識の問題、全国慣れしてないことによるものかもしれません。勝ちに行くために、何をするべきなのか?これをまた、数年かけて選手達にすり込んでいく必要があるようです。

1回戦

1回戦の相手は、57大会ぶり2回目の出場となる長野県代表の飯田IODE長姫高校です。共に初勝利を目指しての戦いとなります。

戦いの模様はこちらから

序盤、やはり花園の初戦ということもあり、緊張感漂う中、まさかのハンドリングエラーからのスタートとなりましたが、良く守り切った後の展開で、初トライをゲット。その後は危なげない展開で初戦を勝利しました。ところが、この試合でロックの藤澤大輝が足を負傷し、途中交代することに。けっこうな重傷で、この後すぐに治療を行いましたが、2回戦に出場できるかどうか微妙な状況になりました。流石に、優勝候補の一角の東海大仰星高校を相手に、藤澤抜きではなかなか難しい…。この時点では、それだけかと思っていたのですが、まさかの事態になろうとは、この時には知る由もありませんでした。

2回戦

なんと主力が3名インフルエンザに感染し、そのまま山口に帰還することになり、主力3名、藤澤は万全ではない状態の中、2回戦当日を迎える事になりました。

戦いの模様はこちらから

正直、万全の状態でも難しい試合になる所が、流石に主力を欠く状況ではなすすべもなく、結果は惨敗。3年生にとっては最後の大会でもあったので、ベストメンバーで試合をさせてあげたかったです。これも感染対策の徹底ができておらず、しかも対応が後手に回っていたことが原因でした。来年以降の反省材料でもあります。

終戦

チーム2023の戦いが終わりました。

想えば、新チームで初めて臨んだ、選抜予選の中国大会では、尾道に善戦するも、力及ばずで決勝に進む事ができませんでした。しかし、その戦いが評価され、選抜大会へ推薦枠で出場。初の全国大会出場となりました。

下馬評では、古豪の秋田工業高校優勢でしたが、それを覆しての、選抜大会で県勢として初勝利を挙げることができました。2回戦の東福岡戦では、力の差を見せつけられましたが、東はそのまま決勝の舞台まで勝ち進んだ事を考えると、完封負けでしたが、選手達の気持ちのスイッチを更に強く押してくれたように感じました。

セブンスでは、グループ首位通過、そして強豪とも互角に渡り合うなど、バックス陣にとっては大きな収穫でした。自分達の力と技に自信を深めるとともに、さらなる飛躍へとつなげる切欠となりました。

そして迎えた、花園予選では、力の差を見せつけながらも、大きな怪我なく、優勝することができました。ここでチームが一息ついて、気が緩むかと思いましたが、初の花園に向けて士気を高めて行くことができました。

そして、花園初出場・初勝利を挙げることができましたが、ここで2023年のチームは終焉を迎えました。6年計画でもありましたが、しっかりと花園への道を切り開いてくれた3年生は、良く力をつけてプレーヤーとして人間として成長してくれたと思います。中学1年生の時に、フェスティバルでふてくされていた坊主が、大学でもラグビーを続けるというのは、なんだか親のような目線でみると感慨深いものもあります。高校1年から大阪から加入してくれた選手、ラグビーをするつもりがなかった高校で、先生にスカウトされた選手など、本当に3年間良く頑張ってチームを盛り立ててくれました。

次は新チームをきたえるために、力を貸してくれることと思います。既に、新チームは始動して、選抜予選に臨んでいます。新チームには荷が重いかもしれませんが、2023年チームを超える成績を残してくれることを期待します。

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