プラセボ効果

スポーツ栄養

世の中が混沌としていて、コロナに関係する説も玉石混交ですが、「コロナに効くらしい」と耳にすると、その商品に飛びついてしまう方も多いと見聞きします。「食べ物で免疫が上がる」などと聞くと、それを買いに行くなどの行動も見られます。果たしてそれは、本当に効果があるのでしょうか?病は気からという言葉や、信じる者は救われるなどと、神頼みのような期待を寄せて信じ切っていると、なんだか効いてきた気がする。プラセボ効果は、まさにこんな状態です。

プラセボ効果という言葉を知らないという方も多いと思いますので、簡単に説明しましょう。

例えば、ある薬の効果を調べるために、一方のグループには成分が入っている薬を、もう一方には成分の入っていない偽薬を摂取してもらい、その効果を検証します。もちろん、どちらのグループにも、それが本物か偽薬かは判らないようにしてあり、「効果がある」と信じて飲んでいます。この時、実験をしている本人も、実はどちらが偽薬なのかを知らない場合もあります。実験者が作為的に、効きそうな人に本物の薬を手渡さないようにするためでもあります。これを二重盲検試験と言います。

本物の薬を飲んだグループは、当然何もしない状態よりも症状が緩和したり、治ったりして、明らかな効果がみられます。すると不思議な事に偽薬を飲んだグループの中にも、症状が緩和するなど効果がみられる人が現れるのです。もちろん、本物の薬を飲んだグループに比べると数も少なく、改善度合いも低いのですが、そういった不思議な効果があります。これをプラセボ効果といいます。

例えば、権威のある研究者が、「これは絶対効きます」を言って手渡したサプリメントと、私が「たぶん効くかも」と適当に手渡したサプリメントだったら、どちらが効きそうな気がしますか?同じサプリメントだとしても、気持ちが違いますよね?いかにも前者の方が効きそうな気がします。

これは栄養やトレーニングでも同じです。「これって効くのかなぁ?」と思って取り組んでいるよりも、必ず効くと思って取り組んだ方が、より効果が期待できるのです。もちろん、“プラセボ効果だのみ”ではいけませんが、栄養のアドバイスやトレーニング内容が間違っていなければ、尚更効果が高くなるのは言うまでもありません。

スポーツの現場でアドバイスをしていると、一生懸命に話を聞いて、素直に継続してくれる選手は、必ず改善されます。しかし、話半分で上の空、しかも話を聞いてないから内容も適当で、継続的に実行できない選手はなかなか改善されず、ライバルとの差が開く一方です。そのうち、ケガや不調に陥ったり、環境のせいにして他のチームに行ったり、そうなると更に悪循環ですよね。トレーナーや栄養士などのスタッフは、その道の専門家です。もちろん、性格的に合う、合わないはあるかもしれませんが、選手のパフォーマンスが良くなるよう、日々考え、アドバイスを送っています。それは素直に聴いて欲しいところですし、一緒に考えて欲しいです。そうすることで、好循環が生まれ、プラセボ効果ではありませんが、ドンドン良い方向に回るはずです。

話は脱線しましたが、スポーツ栄養の世界でも、日々新しい説が検証され、関連する論文を集めて検証するメタ解析などを実施して、定説としてスポーツ業界に定着して行きます。10年前の説が、今は正しいのか?日々、新しい情報をアップデートして行く必要があります。未だに「トレーニングをして乳酸が溜まってきた」なんて言いながら、乳酸=疲労物質だと言っている人もいますが、これは新しい説に置き換わって、乳酸はエネルギーとして認識されつつあります。もちろん、今は疑わしい説や物質でも、10年後には様々な検証がなされて、効果があるという風に変わるものがあるかもしれません。

例えば、今まで運動後は単純に「糖質+たんぱく質」でグリコーゲンを回復!というようなアドバイスが多かったものの、それらを精査すると、それほど単純なものではなかったという話。

運動後に炭水化物と蛋白質を摂取すると、炭水化物の単独摂取よりも筋肉のグリコーゲン回復が増強するという研究結果がある。そのメカニズムとして、ロイシンなどのアミノ酸が膵β細胞からのインスリン分泌促進効果をもたらし、インスリンレベルがより上昇することで、筋グルコース取込みが増加するというものだ。しかし、蛋白質の同時摂取の効果を否定する研究結果もあり一貫しておらず、現時点でコンセンサスを得るに至っていない。

https://sndj-web.jp/news/000945.php?fbclid=IwAR0FxzUDMAhJcNSgXWoQ6Ci_Q8W4mE2KvXuQLcRtnFIxnnwSVsyo-vQm8bY

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また、効果が疑わしい健康食品やサプリメントでも、当人がその気になって飲んでいれば、「効いている気がするかも」と言うこともあり得ます。もし仮に、実際に効果を実感できるのであれば、それはその人にとっては有効なのかもしれません。が、万人に当てはまるわけではありません。信じる者は救われるという、典型的な例ですね。 栄養やトレーニングについても信頼できる指導者に、一人一人にあった方法で指導されることが、その内容を信用し効果も期待できるというわけです。スポーツ栄養に限らず、栄養の世界も、より個人を意識した「パーソナル栄養」の時代に移行していくでしょう。万人に当てはまる方法があるはずもなく、1人1人に応じて、オーダーメイドするのが当たり前になるはずです。

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