正しいボディイメージを持ちましょう!

スポーツ栄養

私がサポートしているチームには、必ず各選手に目標を設定してもらっています。その目標は個人によって様々ですが、目標の体重(体脂肪率も設定する場合も)を、いつまでに何kgという風に、具体的に設定します。

すると「身長は○○㎝あって、体重は△△㎏ぐらい」と、即答できる選手もいれば、「解らない」と答える選手もいます。あるいは、体重が増える毎に、体脂肪率も高く設定している選手がいたり、体脂肪率の設定が一般人でも高すぎるような選手がいたり、そのいずれも採用してしまっている選手がいたりと、どのぐらいの身長で、どのぐらいの体重が理想的か、その時の体脂肪率がどのぐらいなのか?というボディイメージができていない場合が見られます。

もちろん、身長はある程度遺伝的な影響を受けるので、自分が伸ばしたいと思っていても限界があります。お父さんやお母さんの身長を参考にした場合、両親が何らかの理由(無理なダイエット、間違った食習慣、ネグレクト、貧困など)によってMAXまで身長が伸びていなかった場合には、予想以上に伸びる場合がありますが、大抵は予想の範囲を大きく超えることはないでしょう。また、上記の何らかの理由には含めていませんが、両親が子供の頃に、熱心にスポーツに取り組んでいた場合などは、エネルギー不足などの理由により、同様に身長がMAXまで伸びていない場合があります。

さて、身長については、お父さん、お母さんの身長を見比べてみて、「このぐらいかな?」という大人になった時の身長のイメージがつかめるかと思います。では、体重についてはどうでしょう?自分の体重は、同じ年齢の人と比べて軽いのか?重いのか?ということが、一度は気になったことがある人も多いかもしれません。

例えば、ここにAくんとBくんがいて、いずれも体重は60㎏ですが、体形が違って見えます。Aくんの身長は160㎝で60㎏だけど、Bくんは170㎝で60㎏、「体重だけ比べたら同じだけど…、Bくんの方がやせてみえるのはなぜ?」と思うかもしれません。

同じ重さの粘土の棒を、一方は10㎝、もう一方は15㎝の長さに伸ばしたとすると、後者の方が細長くしなければならないでしょう。これと同じように、人間の身体でも、同じ体重であれば、身長が高ければ高いほど、体は細くなるはずです。このように、身長の違う人の体格を比較するためには、どうしたら良いのでしょうか?

BMI(体格指数)

大人の場合には健康診断や栄養指導、健康セミナーなどで聴いたことがあるかもしれませんが、体格を比較するため、特に肥満度を判定するために、BMI(体格指数)という数値を用います。BMIは以下の式で計算できます。

BMI=体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)

※子供(中学生以下)の場合は、肥満度の判定には用いることができません。

先程のAくん、BくんのBMIを計算してみると

Aくん
60㎏÷1.6m÷1.6m=23.44

Bくん
60㎏÷1.7m÷1.7m=20.76

このように、計算したBMIの数値が低いほど、体が細いとみなされ、Bくんの方がAくんに比べて体格が細いということが判ります。ちなみに、大人の場合、BMIが25を超えると、肥満だと判定されます。が、そんなに単純なのでしょうか?

例えば、同じ身長、同じ体重でも一方はぽっちゃりな見た目、脂肪もそれなりについていて、生活習慣病の心配もあるようなレベルのBMI=26の人と、もう一方は筋肉がムキムキで、キレッキレのボディビルダーのような体形ですが、こちらもBMI=26です。前者は明らかに肥満ですが、後者は肥満ではないでしょう。

ラグビーや柔道、アメリカンフットボール、ボディビルなどの競技をしている選手は、体重が重くてBMIもそれなりにあった場合でも、体脂肪が少なく、肥満とは言えないケースが多く見られます。ラグビーの選手では、試合前になるとBMI28、体脂肪率15%を切る選手もいます。

体脂肪率(%)

BMIはあくまでも、判断材料のひとつと考えて、様々な要素について総合的に判断する必要があります。最近の体重計は、体脂肪率が測定できるものが一般的になってきています。もちろん、その精度はピンキリですが、それなりの値段の物の中には、そこそこ精度が良いものもあります。

体脂肪率は%で表しますが、体重当たりに占める体脂肪の割合(%)を推定しているものです。あくまで推定しているのであって、様々な要因や条件の違いによって、測定(推定)誤差があるのは否めません。

家庭用の体重計に搭載されている体脂肪を計測(推定)する機能は、「生体インピーダンス法」というものを用いています。この方法は、体重計についている金属のプレートから微弱な電流を流し、その流れ方の違いによって、体脂肪の量を推定しています。筋肉や臓器は電気を通しますが、脂肪は電気を通しませんので、この性質を利用して体脂肪率を推定します。その際に、統計的に蓄積したデータから、骨量などを補正しているため、体脂肪率は推定という形で算出されます。最近では、統計的に補正していない体重計もありますが、それらについても直接脂肪の重さを測定していないので、あくまでも推定という形になります。

体脂肪率(体重も含めて)を測定する際には、必ず条件を同じにして測定する必要があります。全裸に近い状態か、いつも決まった服装で測定すること、そして家庭で測定する場合には、できれば「朝の同時刻ぐらいに起床して、おしっこをした後、飲食する前に」測定すると、安定して測定できます。

体脂肪計を用いて家庭でも簡便に計測できますが、体脂肪計の原理(電気伝導度法・生体インピーダンス法)は脂肪組織の電気抵抗が高いことを利用して、体に微弱な電流を流して体脂肪の量を推定するもので、体内の水分の量や分布に影響を受けやすいのが難点です。

例えば両足間に電流を流す下肢型タイプでは、朝にくらべ夕方では下半身に分布する水分が相対的に増えるために電気抵抗が弱まり、体脂肪率は低めに出ます。食事などで水分を摂取した後は同様に低く、また排尿後もしくは入浴や運動などによる脱水後は逆に高めに出ます。

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-041.html

ただし、本当に体脂肪率を正確に測定しようと思うと、もっと高度な測定方法での測定が必要です。あくまでも、家庭用の体重計での測定では、目安として考え、その増減を参考にする程度に留めましょう。

体脂肪率はどのぐらいが良いのか?

体脂肪が体に多く付いていると、生活習慣病などの心配が生じてきます。脂肪が大量についていると、脂肪細胞からは炎症反応を起こすような物質が放出され、体に悪影響を及ぼします。逆に、少なすぎると体を作るために必要なパーツを作る材料が不足したり、ホルモンの材料などが不足したり、それらホルモンが放出されなくなったりして、体に不調が見られるようになります。

一般的には、このぐらいの体脂肪率の範囲にあることが理想的だと言われています。

男性:10~20%

女性:18~28%

最近では、各パーツ毎に体脂肪や筋肉量を測定できるような体組成計もありますが、実際に皮下脂肪の厚みを測定したり、各パーツの周囲の長さを測定して記録するような測定方法もあります。私は”ISAK”という「キンアンソロポメトリー協会」のレベル1の資格を持っていますので、必要な場合にはこれらのデータを残すことができます。

理想的だと言われる体脂肪率の範囲は、一般の成人を対象にした値ですが、アスリートの場合はどうなのでしょうか?一見、アスリートだけに、体脂肪率が低ければ低い方が良いように思う方も多いでしょう。陸上の長距離選手などは、かなり低い体脂肪率の場合がありますが、例えばあまりに低い体脂肪率の場合、女性アスリートなどは適切な女性の大人としての身体に発達することができない場合があります。また、男性でもあまりに体脂肪率が低いと、風邪をひきやすかったりするなど免疫機能が低下したり、ケガをしやすくなったり、なんとなく不調になったりするなど、原因が良く分からない場合もありますが、様々な影響があるかもしれません。競技の特性、あるいは個人の個人に応じて適切な体脂肪率を設定する必要があります。

また、増量を希望している選手の場合、あまりに低い体脂肪率の場合には、トレーニングを行っても筋肉が発達しません。ボディビルダーやビキニなどのボディメイクをする競技の選手たちも、競技会の時には脂肪をそぎ落として、キレッキレの身体をしていますが、身体作りをしている時には、それなりに脂肪が付いています。これは体にエネルギーの余裕(体脂肪)がないと、筋肉を増やした場合、それを動かした時にエネルギーが不足してしまう可能性があるからです。そのため、経験的には(尊敬する先生も同意見でした)体脂肪率は15%程度の余裕がなければ、スムーズに筋肉で増量するのは難しくなってきます。もちろん、増量するためには、それだけトレーニング量を増やす必要があり、それに見合った摂取エネルギーの増量も必要です。要するに、エネルギーが十分に必要だということです。

逆に、減量をする場合には、あまりに食べるものを減らしてしまうと、筋肉まで減ってしまい、減量後にリバウンドしやすい体質になってしまいます。そのため、月に1~2㎏程度の減量で、食事だけでなく運動も取り入れて減量するように、いつも指導しています。

増量を希望される、あるいは減量を希望される、理想的な身体を目指したい方は、パーソナル栄養アドバイスも行っています。個人の体格や生活様式、現在の状況に応じて、できることから無理のないように、アドバイスを行っています。

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