【要注意】長期休暇の部活 昼食が足りない問題

スポーツ栄養
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いよいよ夏休みに入り、オリンピック・パラリンピックも開幕します。世の中の状況は、なかなか安心・安全とは言えないかもしれませんが、せめて学生のスポーツ大会や学校の部活の練習は制限なく実施できることを、切に願います。

さて、夏休みの部活の練習は、通常の学校がある時期の練習とは、時間や練習量、練習強度、気象条件、合宿などの生活環境などが大きく異なります。どちらかというと、休日の練習に近く、それと同等か、それ以上の場合があります。それが連日続くのですから、体重がドンドン落ちて行ったり、だんだんと疲労が溜まってケガの原因となったり、合宿で体調を崩してしまったりと、様々な夏休み部活“あるある”があるかと思います。

パフォーマンスが落ちるだけでなく、小、中学生はその期間に成長が止まってしまっている場合も考えられ、いかにこれらを未然に防ぐか?ということが、秋以降の大きな飛躍につながります。

夏休みの食事の特徴

朝から夕方までの練習の場合には、昼食にお弁当を持って行きます。この時に、食中毒の心配があって、袋入りのパンだけの選手や、場合によってはエネルギーゼリーやエネルギーバーのようなものだけを持ってくる選手もいます。コンビニのおにぎりだけというのも、大差ないかもしれませんね。袋入りのパンなどは、エネルギーだけは十分に摂取できたとしても、たんぱく質やミネラル、ビタミンは補給できているのでしょうか?エネルギーゼリーやバーだけで十分なエネルギーが摂取できているのでしょうか?コンビニのおにぎりは、何個食べていて、具は何を選んでいるのでしょうか?

一方、午前中か午後からの練習の場合、帰宅後か出かける前に昼食を食べることになるかと思います。夏休みになるとお母さんが作る昼食がめん類(冷やし中華やそうめんなど)ばかりになったり、冷凍のチャーハンやパンなど火を使わなくても良いものになったりするなど、簡単に調理ができるもので、しかも内容も単調になりがちになります。しかも、夕飯にもその傾向は見られ、やはり火を使わない料理やめん類が多く食卓に供されます。

「判ってはいるけど…」おそらく多くのお母さんたちは思っているでしょう。しかし、日々の忙しさや夏の暑さで、なかなか頑張れないのも事実です。

では、普段、バランスの取れた給食を昼食に食べている小中学生は、どのぐらい栄養、特にエネルギーを摂っているのでしょうか?

部活生は学校給食基準で充分なのか?

給食の栄養については、学校給食基準というものが設定されていて、それに基づいて全国の学校は給食の献立を作成しています。その中で、エネルギーだけを見てみると、下の表のようになっています。

学校給食基準についてはこちら

いくつか用語を説明すると、身体活動レベルというのは、どのぐらい活動しているのか?についての係数であり、学校給食基準では、全て普通に合わせて計算しています。基礎代謝(生きるために最低限必要なエネルギー)に身体活動レベルを掛け算して、推定エネルギー必要量を計算します(実際に掛け算すると、数値は微妙に違いますが…)。この推定エネルギー必要量は、50%の人がエネルギー不足になり、50%の人がエネルギー過剰となる値となります。つまり、どちらかに外れている人がいる訳です。身長や体重が標準よりも大きい子供については、より多くのエネルギーが必要だと考えてください。少し脱線しましたが、この推定エネルギー必要量の1/3を学校の給食では提供できるように、献立を立てている訳です。

朝食が少ないからとか、夕食の献立が…とか、そんなことは考慮にいれていないので、お母さんたちはそれを見越して、食事を提供する必要があります。近頃の給食だより(献立表)にはエネルギー、たんぱく質、脂質ぐらいは記載されていることが多いかもしれません。それを参考にすると良いかもしれませんね。「我が家の子供は、標準よりも大きいからもう少し多く食べないといけないし、しかもスポーツをしているから、更にプラスして…」という具合に考えていると、結構な量を食べる必要があることに気が付くと思います。夏休みになると、子供たちがすぐに「腹減った~!なんかないの?」というのは、実際にエネルギーが不足しているからなのかもしれません。

部活生は身体活動レベルが”高い”

学校給食基準では、身体活動レベルを普通で計算しているという風に書きましたが、では低い場合や高い場合はどうなのか?こちらは学校給食基準では判りませんので、「日本人の食事摂取基準2020」で見てみることにしましょう。

日本人の食事摂取基準2020はこちら

実は、若干ズレが見られることに気が付くと思います。学校給食基準は、直近の児童、生徒の生データを用いて算出しているので、食事摂取基準とは少しズレてしまうのです。この基準で考えた場合でも、昼食は1/3としても良いでしょうし、朝食は定番の食事なら、スマホで簡単に計算できるでしょうから、朝食分をひいたものを昼と夜で等分するか、適当な配分をすると良いでしょう。

といっても、自分で食事を作る時にカロリーを計算して作る人は、かなり稀な人か、あるいは管理栄養士・栄養士ぐらいでしょうか。

昼食の量は足りていますか?

さて、どのぐらいのエネルギーが必要なのかが、ある程度分かったところで、実際に夏休みの昼食のエネルギーが十分に足りているのか?考えてみましょう。下の表には、昼食で食べるような食品のエネルギーと栄養情報を掲載しています。

アスリートの場合、必要なエネルギーの内、糖質で摂取するエネルギーは50~60%は必要となります。糖質の量とエネルギーは計算することは難しいと思いますので、食品に含まれるエネルギーで60%を占めるだけ主食となるごはん、パン類、めん類で取るようにして見ると良いでしょう。

中学1年生男子の場合、2900kcalのエネルギーが必要だった場合、そのうちの60%の1740kcalを炭水化物で摂取する必要があります。さらに、これの1/3を昼に食べるとすると、580kcal分を食べる必要があります。

さて、ここまで必要なエネルギーを計算するなどして、このぐらい食べたら良いでしょう!と話してきましたが、あくまで理想論で話しています。最初の方に、「昼食がめん類(冷やし中華やそうめんなど)ばかりになったり、冷凍のチャーハンやパンなど火を使わなくても良いものになったり」という話をしていたにも関わらず、です。仮に、580kcal分をめん類や冷凍チャーハン、ごはんなどでクリアしていたとしても、残りの40%で取る必要があるたんぱく質やビタミン、ミネラルが不足しませんか?

ちなみに、580kcal分をうどんで摂るとしたら、少なくとも冷凍うどん2玉分と少しになります。肉うどんを大盛りで2玉分(食堂で食べたら1.5玉分かもしれません)食べたとしても、明らかに残りの387kcal分が不足しているという事が判ります。

それから、この時期食べやすい”そうめん”ですが、一束(50g)=白米100g(炊いたもの)を同じぐらいのエネルギーとなるので、白米を食べる代わりにそうめんを食べる場合には、かなりの量を食べる必要があるかと思います。摂取エネルギー量が少なくならないように、「500gの白米なら、5束は必要」という風に換算して、十分な量を食べるようにしましょう。

結局のところ、バランスを取る必要がある

昼食にも、昨夜のおかずの残りや、冷食でも良いですし、サラダチキンなどのレトルトパウチでも良いので、たんぱく質のおかずをつけるようにしましょう。また、簡単にミニトマトやカット野菜のサラダ、あるいは冷凍のブロッコリーなどもプラスして、野菜も確保できると良いですね。

もし、お母さんが仕事でいない場合でも、子供が自分で準備することも、「アスリートのスキルとして必要なこと」として、しっかり取り組ませることも必要です。食事を自分で準備することで、お母さんの大変さやありがたさを理解でき、自分で選択することで、必要な物を考えて食べるようになるはずです。最初は少し手間がかかるかもしれませんが、準備することぐらいは、ひと夏あれば十分身に付けられるスキルだと思います。

ところで、夏休みの食事について、昼食よりも大きな問題となるものがあります。続きは、次のブログに↓

春休みは中学、高校など新しいステージへと進学する場合、特に注意したい栄養について書いています。併せて読んでみてください。

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