あくまで個人の感想です

スポーツ栄養

一時期、効果が疑わしい健康食品のCMがテレビで頻繁に流れていたり、ネットでステマのような記事をよく見かけましたが、ウェルク(WELQ)問題で記事を削除したり、怪しいものはGoogleが検索で圏外に飛ばしたりすることで、人目に触れることが少なくなりました。ところが、最近もお年寄りがテレビを見るような時間帯(早朝、午前中)にテレビ番組を見ていると、相変わらず番組間のCMで盛んに見かけます。さらに、改善されつつあるものの、未だに記事なのか、ステマなのか、うっかりクリックしそうな関連記事の配置をしているウェブサイトもあります。

いわゆる健康食品

日本の健康食品・サプリメント推定市場規模は、2019年の健康食品市場は前年比0.2%減の1兆2,455億円で、2004年頃から頭打ちのような状態です。

【2019年総括と2020年展望】1.2兆円健食市場通販微増、訪販苦戦 | 健康産業新聞
2019年の健康食品市場は前年比0.2%減の1兆2,455億円。前年との差は20億円だった。全体で見れば微減だが、チャネル別の様相は異なる。

企業は市場規模が伸び悩む中、あの手この手で健康食品を売り込みたい訳ですが、では、効果が疑わしいような健康食品「いわゆる健康食品」とは、いったいどのようなものなのか?

いわゆる「健康食品」のホームページ

厚労省では、このように定義しています。要するに、何かしら根拠があって、国や企業が責任をもって、一定の効果を証明したものが、この「保険機能食品」であり、これと「医薬品」に当たるもの以外を「いわゆる健康食品」という風に呼んでいます。ただ、「健康食品」とか「サプリメント」という場合には、「いわゆる健康食品」も含めてしまうので、判りづらいですね。

例えば、「いわゆる健康食品」のCMでは、「膝の痛みがすっと消えました」とか、「お腹の周りの肉が落ちたみたい」などという言葉を使用者が繰り返している映像が流され、あたかも非常に効果があり、その症状を確実に解消してくれるような印象を与えています。

しかし、その画面の端のほうに「これは個人の感想です」という言葉や、「適切な栄養管理と運動を実施しました」という小さなテロップを見逃してはいけません。この健康食品には、これらの症状を改善する科学的根拠はなく、あくまでも個人の感想を述べているか、あるいはこの健康食品の効果ではなく、「適切な栄養管理と運動を実施した」効果なのかもしれません。

もちろん、市販の薬のように、しっかりと臨床試験を行い、その効果と安全性が立証された後に、世の中にリリースされているものもあります。こちらは科学的な根拠に基づいた製品づくりを行っていると考えて良いです(中にはデータを改ざんしている例もありましたが…)。

特定保健用食品(トクホ)のように、

身体の生理学的機能や生物学的活動に関与する特定の保健機能を有する成分を摂取することにより、健康の維持増進に役立ち、特定の保健の用途に資することを目的とした食品である

https://www.mhlw.go.jp/topics/2002/03/tp0313-2f.html

という風に、国の認可を得てマークを表示して売られているものや、栄養機能食品のように、

身体の健全な成長、発達、健康の維持に必要な栄養成分の補給・補完を目的とした食品であり、高齢化、食生活の乱れなどにより、通常の食生活を行うことが難しく、1日に必要な栄養成分を摂れない場合に、その補給・補完のために利用する食品である。

https://www.mhlw.go.jp/topics/2002/03/tp0313-2b.html

と規定され、脂肪酸(n-3系脂肪酸)、ミネラル(亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム)、ビタミン(ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D、E、K、葉酸)以上のような栄養素が、栄養機能食品として表示を許されています。

また、機能性表示食品のように、

機能性表示食品制度とは、国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度です。
特定保健用食品(トクホ)と異なり、国が審査を行いませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があります。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/

というように、近年では様々な表示を見ることができますが、「いわゆる健康食品」には、このような表示がありません。購入の際に信頼できるかどうかの、一つの指標になるでしょう。

いわゆる健康食品は、特定保健用食品(トクホ)のように国が審査をしているものとは異なり、特に臨床試験を行ったわけではないものが大半です。それは本当に効果があるのでしょうか?科学的根拠はあるのでしょうか?

もちろん、サプリメントなどについても同様のことが言えます。それ、本当に効いているの?それとも、あくまで個人の感想レベル?

科学的根拠(エビデンス)とは?

科学的根拠に基づくという言葉を、最近少しは耳にする機会が増えたように思います。もう一つ、エビデンスという言葉を聞かれたことのある方も多いかもしれません。どちらも、ほぼ同意の内容です。

科学的根拠に基づいた栄養はEvidence Based Nutrition(EBN)と呼ばれています。では、科学的根拠と言ったら、どういうことなのでしょうか?

ある現象に対して、科学的に検証されて、その結果に再現性があり、他の研究者にも立証されるものだと私は認識しております。

例えば、「Aという食品は中性脂肪を減少させる効果が期待できる」という仮説を立て、それを2つのグループに、一方はAが含まれないものを、もう一方はAが含まれるものを与えて、その結果を検証したとします。もちろん、その期間の食事については、エネルギー量やその他の栄養素についても、同じ条件にしなければなりません。その結果、Aが含まれるものを与えたほうが、統計学的に優位に中性脂肪を減少させたという結果が出た場合、この食品は「中性脂肪を減少させる」という効果が立証されたわけです。もちろん、Aを含まない食品を与えたグループにも、同様にAを含む食品を与えて試験を行っても、同様の結果が得られれば、信頼度がさらに上がります。そして、他の研究者が同様に試験を行っても同様の結果が得られれば、これは科学的根拠になり、これを食べると中性脂肪が減少するといっても良いでしょう。

ただし、Aという食品を食べた結果、中性脂肪が減少して、健康になったり、体重が減少したりすることはあるかもしれませんが、「Aという食品を食べると健康になる」ということは、科学的根拠が曖昧なものになってしまいます。

このように、栄養や健康、運動に関わらず、その情報が実際に科学的根拠に基づいた情報なのか?それらをしっかりと確認してから自身の生活やトレーニングに取り入れることがベストです。もちろん、自身の体で検証するというのもありですし、自分の身体に合う、合わないというのもあるでしょう。あるいは、気持ち薬のようにプラシーボ効果が働いているのかもしれませんね。プラシーボ効果については、またの機会に。

追記(8/27発表のリリース)

このブログを書いた翌日、トクホの広告ルールが厳格化されるというリリースがありました。

公益財団法人「日本健康・栄養食品協会」(東京)は27日、特定保健用食品(トクホ)のメーカーで構成する「特定保健用食品公正取引協議会」を発足させた。協議会は広告ルールを厳格化し、違反企業を処分する規約を公表。トクホは健康維持の効能表示が国に認められた食品で、市場も大きいため、誇大広告で不当な利益を得ることがないよう、適正な表示にする狙い。

消費者庁によると、トクホは153社の1074商品が許可されている。協議会によると市場規模は年6千億円超。高齢化の進行に伴い、消費者に分かりやすい表示が求められていた。

https://this.kiji.is/671629082402554977

 

https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000199365

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