【要注意】長期休暇の部活 ブランチは体重減少の危険

スポーツ栄養

朝食を食べていますか?

前回は昼食編ということで、お話ししましたが、結末に元も子もないことを話ました。結局は、バランスや全体を見る必要があるということですね。しかしながら、夏休みに気をつける必要があるのは、昼食ではなくむしろ朝食やブランチ、補食です。

「午後から練習だから、遅くまで寝ててもOK!」なんて選手が、世の中にどれほど多くいるのか?親は親で、「練習大変だから、ゆっくり寝させておいてあげよう」とか「早く起きてくれたら良いのに」とか、それぞれに思惑があるでしょう。ところが、遅く起きてくることで、朝食と昼食が一緒になってしまい、ブランチのような形の食事を食べて部活に行ってしまうことが多いのも事実です。こうなると、1日2食となってしまい、朝食1食分が丸々抜けてしまいます。

昼食の内容うんぬんよりも、こちらの方が実は大きな問題となります。なぜなら、一食分のエネルギーが、丸ごと抜け落ちてしまうからです。それでも、「朝遅くまで寝ているからエネルギー使ってないし、ブランチをしっかり食べて行っているし、大丈夫でしょ?」という風に思っている選手や保護者の方もいるかもしれません。しかし、寝ている間にもエネルギーは消費されていますし、なによりも学校がある平日よりも練習時間が長くなり、練習量も多く、しかも強度も上がっていることが多いので、普段の練習よりも多くのエネルギーを消費するはずです。

単純に朝食が抜け落ちただけで、どれぐらいのエネルギーが不足してしまうのか?

食パン(6枚切り):164kcal×2枚=328kcal
卵2個:91kcal×2=182kcal
ハム2枚20g:39kcal
牛乳200㎖:138kcal
Total:689kcal

上記のような内容の朝食では、トータルで689kcalになります。少しの野菜などをプラスしたとしても、750kcal程度になるかと思います。これだけのエネルギーが1日分の食事から抜け落ちてしまうのです。

ご飯300g:468kcal)
焼き鮭(銀ざけ・生)70g:143kcal
牛乳200㎖:138kcal
Total:749kcal

ご飯を食べている選手の場合には、上記のような内容だと749kcalとなり、それにみそ汁や他のおかずを加えると、800kcal以上になるでしょう。こちらも、1食分のエネルギーは大きいものとなっています。

普段、学校がある時にお弁当や給食で食べる内容と、同様の内容を夏休みの昼食に食べられているとしても、余分に750kcal分をブランチで食べることは難しいでしょう。ましてや、お弁当や給食の内容よりも見劣りする内容だった場合には、とても栄養が十分に摂れているとは言い難いでしょう。

練習量、練習時間、強度が上がっている

それに加えて、先程話したように、練習量、時間、強度が上がっているとなると、それに伴うエネルギー消費が上がっていることで、不足するエネルギーを夕飯で確保するか、あるいは自分の脂肪を削ってエネルギーを生み出す必要があります。脂肪が十分にある場合は、脂肪が減るだけですが、体脂肪の少ない選手については、自分の筋肉を削ってエネルギーを生み出すことになります。すると、体重は簡単に減少してしまうだけでなく、練習で傷んだ筋肉の修復ができず、当然ながら筋肉の増量は難しくなります。

さらに、エネルギー不足が続くことで、身体の様々な部分、機能で障害が生じ、ケガや大きな不調、最悪はオーバートレーニングのような状態となります。日頃からカルシウムの摂取や骨への蓄積が不十分な選手は、疲労骨折を招くかもしれませんし、鉄分が不足気味の選手は、貧血になるかもしれません。これらは、エネルギー不足が招く症状の一部にすぎず、様々な障害を引き起こしますが、最大の問題は成長が止まる可能性があるということです。

とくに、成長期の選手にとっては、生活に必要なエネルギーと練習で必要なエネルギーで、1日に摂取するエネルギーを全て使い果たしてしまった場合、身長が伸びるための骨や筋肉を作るエネルギーが不足してしまい、これらが伸びることができません。夏に成長を止めないためには、十分なエネルギーが必要なのです。実際に、夏に身長の伸び、体重の増加が共に停滞する選手を多く見かけます。私が指導している選手達も、最初の頃は理解できずに、夏に食事量が落ちることで、体重を増量できずにいました。理解できて、自分で食べる努力をした選手は、夏でも体重を増やすことができています。

ベストなパフォーマンスのために

また、たとえ平日に学校がある時と同じ量、内容のものをブランチの中に全部詰め込んで、たくさん食べたとしても、昼からの練習ではベストなパフォーマンスができないという研究結果もあります。

自転車競技の選手が、①朝、昼を分けて食べる選手と、②昼にまとめて食べる選手に別れて食事をして、夕方にパフォーマンステストを行った際に、①の選手の方が良いパフォーマンスがでたということが実証されています。これは、寝ている間に失われたエネルギー、特に筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲンを朝食で補給することで、十分に筋肉へと蓄えられ、それが夕方のパフォーマンスにつながっていると考えられています。もちろん、昼に食べた食事でもグリコーゲンは蓄えられるのですが、それでは時間が不十分だったのだと考えられます。食べたものが消化吸収されるのには、個人差はありますが2時間以上はかかります。それらが血液に取り込まれ、肝臓へと送られた後に、全身へと供給されて、それらがグリコーゲンへと変換されるとなると、結構な時間がかかると考えた方が良いでしょう。

Omission of a carbohydraterich breakfast impairs evening endurance exerciseperformance despite complete dietary compensation at lunch. Eur J Sport Sci. 2020 Aug 27;1-9

もし、朝起きるのが苦手であるとか、もう少し寝ていたいというのであれば、いつも平日に起きる時間に起きて朝食を食べて、二度寝するというのもひとつの方法です。もちろん、前日の夜はしっかり早く寝る事で、十分な睡眠時間も確保したいところです。

また、普段補食を食べている選手は、夏休みになると補食が摂れないケースをよく見かけます。これも、平日の時のような授業の休み時間や、練習の前の時間に補食を食べるというようなルーティーンができないこともあります。しかし、これも自分の意識づけで時間を決めて食べるということで解消できるはずです。練習の合間に食べる時間があれば、エネルギーゼリーなどを補給するというのでも、練習中のエネルギーを補うことができるはずです。

アスリートにとっては食事もトレーニングの一環です。日々、意識を高くもって食事にも向き合うことで、良い練習ができ、その結果として試合で力を出し切ることが可能になります。そうなるよう、まずは1日のスタートである朝食を充実させて欲しいです。

春休みは中学、高校など新しいステージへと進学する場合、特に注意したい栄養について書いています。併せて読んでみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました